インビクタス 負けざる者たち
「グラン・トリノ」で、ざっくりといえば「ケリ」をつけたクリント・イーストウッド監督の新作。
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クリント・イーストウッド監督なので所謂まっとうな「スポ根」映画ではないだろうということは観る前から予想がついてました。まあそれでも男くさいけど。
今年ワールドカップ(注1)があるというタイミングなので、事前に準備を完全に行って早々と製作していくというクリント・イーストウッド監督だからこそのタイミング。
孤高の騎士クリント・イーストウッド (映画作家が自身を語る)
- 作者: マイケル・ヘンリー・ウィルソン,石原陽一郎
- 出版社/メーカー: フィルムアート社
- 発売日: 2008/06/30
- メディア: 単行本
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僕は友人とこの映画を観に行ってからしばらく考えていました。
どこか知ったかぶりっぽい言い方で嫌ですが、当たり前の話でどの視点から観たとしても映画に完璧なんてありえない。
ただ必ずスキが現れるものを、それを恐れないかのようにスイスイと物語を運んでいくサマは、「グラン・トリノ」よりも同年に観ることになった「チェンジリング」を彷彿とさせる気がします。
多分今の日本でこういう物語の運びができそうなのは、頑張っても周防正行監督くらいなんではないかと僕は思います。
「赦す」というテーマなのでそこは「グラン・トリノ」から続き、といった感じです。
モーガン・フリーマン氏は某誌のインタビューで、「アバター騒がれすぎなんじゃないのか?所詮漫画みたいな映画だろ?俳優の目を見つめるとそこに違う人格がある。そういう仕事がしたい」
と言ってますけど、その言葉も説得力が増すかのような見事さ。対するマット・デイモン氏も負けてない。(注2)
けれどクリント・イーストウッド監督もモーガン・フリーマン氏も、ネルソン・マンデラ氏をあまり持ちあげすぎるようなことはしていないわけです。
まあこのあたりは、誰もが思うことでしょう。
ただこの作品、たしかに傑作ではあってもクリント・イーストウッド監督とわかって観ているとどこか物足りない。
しばらく考えていたけれど、結局うまくは言えない。
なぜか。「チェンジリング」にはあった映画の魅力的な歪のようなものが、今回は題材ゆえに影を潜めたからでしょうか?
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それともここずっと作家性が強い傑作を生み続けたクリント・イーストウッド監督だけに、今回は個人とそこから生まれる大衆の憤りや葛藤みたいなものに今回は焦点が当てられていないからか?
いや「ケリ」とつけたとはっきり言い切るならば、ここからまた違う視点が生まれるはず。
自分にはまだよくわからないんですが、それは今後の作品待ちにしたい。(注3)
かなりの良作ではあるけれど、現代映画界最高の巨匠の今後の展開にさらなる期待の余白をつけるという意味で
採点=☆☆☆★★★
個人的な本年の映画では、現時点で「フローズン・リバー」「抱擁のかけら」に続くベスト3の映画。
(注1)友人は「岡田ジャパンに観てほしい」って言ってたけど、百回観ても勝てないと思う。
(注3)全然知らなかったんですが、マット・デイモン氏主演でもうすぐ撮影に入るって本当かよ!さすがに驚いた。
原題:INVICTUS アメリカ映画
監督:クリント・イーストウッド
撮影:トム・スターン
音楽:カイル・イーストウッド マイケル・スティーブンス
出演:モーガン・フリーマン マット・デイモン他
原作:ジョン・カーリン
製作総指揮:モーガン・フリーマン ティム・ムーア ゲイリー・バーバー・ロジャー・バーンバウム
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/invictus/
配給:ワーナー