告白(中島哲也)
T−JOY 大泉
監督・脚本:中島哲也
撮影:阿藤正一 尾澤篤史
音楽:金橋豊彦
原作:湊かなえ
企画:川村元気
配給:東宝
http://kokuhaku-shimasu.jp/index.html
☆☆☆★★★
”この文章は随所のシーンの詳細に触れています。読まれる際は自己責任でお願いします。”
中島哲也監督はゴヒイキの映画監督のひとりで、今年の日本映画で最も待ち遠しかった映画のひとつ。
原作「告白」は以前に読んでいて、いったい監督はどう映画化するのかワクワクしていた。
ベストと言える座席を確保し、暑くてバテ気味だったので少し涼んで更にはリポビタンDも飲んでから観賞。
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本当に驚いた。映画のおそらく4分の1ほどの時間を使って、原作の森口先生の告白の場面を描いている。
「嫌われ松子の一生」を思い出すような、なんというか模範的な映画の物語構成に全くしていない作劇に完全に虚をつかれた。
しかも言葉が映画を覆っている。
けれどこの場面で完全に酔いしれた。これは紛れもなく「映画」だ、と言いたい。大袈裟ではなく暗闇の映画館でずっと永遠に観ていたい。とさえ思った。
ああ、中島哲也監督!貴方が映画を作ってる時代を生きていることができて、本当に良かったよ!本当にそう思った。ホラー映画的なたたずまいだけど、どこかで観たようで、いや、これまで観たことがないような、そんな戦慄と恐怖が続く画面の連続による世界観の生み出し方に感激した。なんて奇妙で、挑戦的なんだと。
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しかも教室内のシーンで、一瞬ダンスまで入れる。
「嫌われ松子の一生」を含む、これまでの中島哲也作品があるからこそ作れる映画だと早くも確信した。「中島哲也の、中島哲也による、映画ファンのための、中島哲也映画史」を貴方は作っちまった。美月と修哉の逢瀬の場面では早くも涙が出た。
しかしやや飽きてきたかなあ、と思ったところで、修哉に関するシーンで一瞬、個人的には昔の怪談映画を思わすようなカットが出てきて目を見張る。そして、どこか園子温監督の映画を思わすような血生臭さ溢れる映像も次から次へと登場する。
けれど、部分的に似ていると思うだけ。映画全体で醸し出している空気感は決定的に違う。どこまでも僕には新鮮だ。
そして、どこまでも優しい映画だ。
終盤の爆破シーンは、爆破をやってくれるだけでも嬉しいのに、まるで完成度の高いミュージックビデオのようだ。
けれど「告白」が見事に「映画」だと言いたくなるのは、ここで終わらないからだ。人間同士を対峙させて、人間ドラマとして完結させるからこそ、映画的なんだ。
監督はこう言っている。「いろんなジャンルの映画があるのが健康な状態だと思う」と。僕もそう思う。
追記
結局のところ最後に「告白」したいのは、怖いと思った映画なのにずっと観ていたい。そして「幼い子供たちの死」が描かれた映画なのに、僕はむちゃくちゃ楽しんでしまった。こんな矛盾した感覚を僕自身が持っていることに改めて気付かされてしまった。それが一番怖かったということを「告白」したい。
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