キャタピラー(若松孝二)
ヒューマントラストシネマ有楽町
キャタピラー 日本映画
監督・製作:若松孝二
撮影:辻智彦 戸田義久
主題歌:元ちとせ
配給:若松プロダクション、スコーレ株式会社
好感度=☆☆☆☆(ダンゼン優秀!)
日本が敗戦してから65年の8月15日の日曜日、今年も千鳥ヶ淵に参拝してきました。そしてその夜、寺島しのぶ氏がベルリン国際映画祭で日本人としては35年ぶりに最優秀女優賞を受賞した「キャタピラー」を観てきました。監督は大傑作「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」以来となる若松孝二監督。
窓口料金1300円 前売り券1000円。
大変素晴らしい傑作です。安いし、もう一回観たいとも思ってます。以下、特に魅力的だった点について一部。
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まずなかなか意表を突かれたオープニングの後の燃える炎の映像に、なにやら力強い映画が待ち受けている予感を感じさせます。さっそく気合いが伝わってきます。「つかみ」は重要ですけど、バッチリ。そしてこの炎はその後も重要なのですから、さすが。
この映画は戦時下の閉塞した田舎の夫婦が主役なのですが、巧いのは夫が帰ってきて戸惑っている妻が、最初に夫の尿の世話をする場面。ここで妻が笑顔を見せます。ああ、この妻は献身的な女性であるということがわかる。
妻と夫の性行為において、妻が夫に「なんでダメなのか」のように怒る場面がありますけど、この際使われる悲鳴を使った演出が良い。好きです。核心に触れるから書きませんけど、こうやって挟まれる夫の記憶の回想は重要です。
とにかくこうやって書いていっても再認識させられますけど、映画に一切の無駄を感じないです。
妻の方にばかりではなく、傷痍軍人である夫にも印象的な場面があります。妻にご飯や卵をぶつけられた後の夫には、それまでと違った表情の変化が感じられる。どこか力を失い、何か諦観してしまったような。
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他にも、篠原勝之氏のキャラクターが良い。何か映画をとっつきやすくしてくれています。
そして、後半はさながらホラー映画のよう。反戦を訴える映画ではありますけど、様々な魅力に溢れた映画です。
それにしても、1時間24分とは思えないほど密度が濃い映画です。果物で言えば同じ大きさだったらタネが少なくて甘い部分が多いほうが良いに決まってます。
しかも聞いた話では12日間で撮ったとか!?これには驚きます。ここで思い出したのが、僕が度々推している真利子哲也監督の「イエローキッド」。パンフレットで確認すると、10日間と書いてあります。で、106分。やはり密度が濃い。いやはや、凄いことをする監督たちがいるものです。
主演の寺島しのぶ、大西信満両氏は、荒戸源次郎監督の傑作「赤目四十八瀧心中未遂」の顔合わせなわけですが、思い出したのが少し前に行われたトークショーで荒戸監督、『満州を題材にした映画を考えていたときに「人間失格」の話が来た』と、言ってたような。はっきり覚えてないから記憶違いかもしれませんが、それも観てみたかった気もします。
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↑「キャタピラー」特集。監督インタビューでは脚本・キャスティングのことから、元ちとせさんの歌が流れるエンディングについてのことなど、かなり充実した内容。寺島しのぶさんインタビューと、足立正生監督の若松孝二論もあり、観た後に読むと尚良かったです。
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