「立候補」(藤岡利充監督作品)

ポレポレ東中野

座席位置 最前列中央

評点・・・☆☆☆★★★ 上出来の部類

以下Facebookより転載。

参院選投票日間近。「選挙」を描くドキュメンタリー映画について、2作続けて書きます。2作目。

過日、ポレポレ東中野にて藤岡利充監督「立候補」を観ました。衝撃の傑作。

主に2011年の大阪府知事選に立候補したマック赤坂氏を中心に、外山恒一氏、がんに侵された羽柴誠三秀吉氏などのインタビューを交え、所謂「泡沫候補」と言われる人たちを追ったドキュメンタリーです。

かつて「ゆきゆきて、神軍」というドキュメンタリーがありました。「神軍平等兵」を名乗る奥崎謙三を追った映画史に残る有名な作品。
奥崎謙三はパッと見変人だし、周りにいたら迷惑どころの話じゃない気がする人物だけど、映画を観ているうちに、気が付くと彼の虜になっている。

この映画のマック赤坂氏にも、同じものを感じる。
いや、マック赤坂氏の行動を笑うことがあっても、まさか彼の行動の行く末に涙することになろうとは思いもしなかった。映画の前売り券には「笑えます。泣けます。」と書いてあるんですが、これは嘘では無い。

それは彼の秘書と、彼の息子の存在が大きい。マック赤坂氏が罵声を浴びながらも「公職選挙法」を盾にあらゆるところで歌い踊り続ける行動の先に、マック赤坂氏の会社を継いでる彼の息子が、映画の終盤に取る行動に涙するのです。

この映画を観ても、結果マック赤坂氏に一票投じようとはちっとも思わない。だけど橋下徹大阪市長安倍晋三首相の街宣にまで飛び込むマック赤坂氏。そこでマック赤坂氏に罵声を浴びせる大群衆のひとりにも、日の丸の旗がひしめく中から出てきて罵声を浴びせる右翼と思しき連中のひとりにも、決してなりたいとは思わない。これが「多数決などクソ食らえだ」と言う外山恒一氏のアジテーションに繋がる。

そして、橋下徹大阪市長松井一郎大阪府知事のある映像を使った監督の「蛮勇」ぶりを買いたい。怖いもの知らずなことはドキュメンタリストとして大切なことです。

また驚いたのは「多数決などクソ食らえだ」とアジるアナーキスト外山恒一氏の映像が、今年サマソニにも来るM.I.A.(オレの大好きな歌手)のコンサートで使われていたとは!そして外山恒一氏の言ってることが正論に聞こえてきてしまう奇妙な説得力。

ネタバレにならないよう書くことを心がけているのでここまでにしますが、とにかく本当に信じられない傑作。あまりにも小規模公開なので連日大混雑らしいですが、是非観てほしい。最後にこの監督、遊び心と編集が巧い。