ヘヴンズ ストーリー(瀬々敬久)

銀座シネパトス

ヘヴンズ ストーリー 日本映画

4時間38分

座席位置:最前列中央

監督:瀬々敬久

脚本:佐藤有記

出演:寉岡萌希 長谷川朝晴 忍成修吾 村上淳 山崎ハコ 江口のりこ 佐藤浩市 柄本明

撮影:鍋島淳裕 斉藤幸一 花村也寸志

美術:野々垣聡 田中浩二 金林剛

音楽:安川午朗

http://heavens-story.com/

配給:ムヴィオラ

好感度点数=☆☆☆☆★(ダンゼン優秀!)

キネマ旬報 2010年 10/15号 [雑誌]

キネマ旬報 2010年 10/15号 [雑誌]

僕が以前に絶賛した「イエローキッド」の真利子哲也監督による評あり。読み応えあります。

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なんと、4時間38分!長い。こんな長い映画今まで観た記憶が無いです。「愛のむきだし」よりさらに長い。

これに加えて、途中休憩、窓口でのやり取り、予告を含めたら当然この映画のために与える時間はもっと長い。

それこそ、仮に昼ごはん食べてから映画を観に行ったとします。終わったら晩ご飯食べるというレベル。

僕が観たのは先刻三連休の最終日、18:00上映開始回だったので、終わったら終電近いレベル。

しかし後述しますが、この映画はそこまでして映画館に観に行く価値があると断言します。

窓口料金2500円、前売り2000円だったと思います。3Dでもないのに高いかも、と思うかも。

しかし一本の映画と思えないほど多くの事柄が語られている映画なので、決して高いと思いません。未曾有の体験が出来るかも。

ちなみに僕は銀座シネパトスで観たのですが、シネパトスはバウムクーヘンが売ってるのでお腹すいたら休憩中に食べると良いと思います。僕は食べました。

というかこの映画観る前に気を使いました。途中で疲れないように、喫茶店で早めに待ってて二時間くらいボーっとしてました。体力温存。

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ドキュメンタリー 頭脳警察 [DVD]

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監督は、瀬々敬久氏。話が脱線するけれど、この監督には個人的に思い入れがあります。

監督の前作「ドキュメンタリー頭脳警察」を公開時に観ました。そしてその感想をブログに書きました。

すると監督が僕の感想を読んだと言うのですよ。厳密に言うと、ブログに掲載している僕のメールアドレスに配給会社から「監督が読んだ」とメールが来たんです。

驚きました。手のこんだイタズラかと思いました。配給会社に電話かけたら、事実でした。

巨大なインターネットの片隅に埋もれ、圧倒的に不人気で存在感全く無しなのに、チビチビ更新していて良かったと思いました。

それ以来、作ってる人間に対してのメッセージのつもりで書きたい、なんてことを想うことが多くなったかも。

公式ブログに紹介いただきました。

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話を戻します。映画館で観に行く価値を、僕がどこに感じたか。

この映画、章立て構成になってます。全9章。時間計って観ていたわけじゃないのでどうかはわかりませんが、多分それぞれの章の時間的な尺は同じくらいではないでしょうか。そんなことを気にして観ていられないほど力強い映画なんですけど。

なので、自宅でDVDで観ると、心のどこかで「タイミングよく一時停止しながら観られる」という余裕が働くかもしれません。

「そんなことしない」と思って観たとしても、やはり余裕は発生するかもしれない。

ならば、インターミッションのタイミングも見事なので、自分では止めることができない映画館で観るほうが良いと思います。この映画と一緒にスタートして、最後まで共に走り続ける。それだけの映画だと、僕は思います。この映画と始めて出会った時に最後まで共にすることができる、その機会は、一度しかない。それは、素晴らしく貴重な機会だと思います。

スクリーンを見上げてほしいです。

まだ映画の内容書いてないのに、長くなってしまいました。

というか、冒頭から最後まで追って書くと「論文」レベルの長大な文章になってしまう・・・

ということで、思ったことを要点をおさえて。

その前に映画同様、途中休憩。ちょっと一回クリックしてから、先を読んでもらえれば。

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何でも聞いたところによると、監督がプロットを書いて佐藤氏が脚本にし、その後差し込み脚本が入ってこういう長尺映画になったそうなんですけど、少しずつ人々が繋がり合っていくのを描いていく丁寧さ同様に、言葉に「直球」の力強さを感じました。

「家族を殺された人間は、少しでも幸せを望んじゃダメかな」など、とにかく、「思わせぶり」だとか、「奥歯に物が詰まった」だとか、そういった表現が当てはまらない、ストレートな言葉が胸を打ちます。

本当の人間が、実際に吐き出すであろう、そういう言葉にこだわったんではないでしょうか。

ストレートと言えば、ユーモアというか、コメディの描写もほとんど無いです。

ちょっと肩の力を抜いてくれるような、そういうシーンは、カイジマと波田のシーンの冒頭と、カイジマの子供の小さい頃くらいでしょうか。

とにかく、真摯に作りだす。そういうことがよく伝わってきます。

ここからは終盤に触れます。観てない人は読まないでください。


上記したことの続きにもなりますけど、終盤トモキの拳に傷がついているのには震えました。

物語の結末だけをみればなんてことが無いかもしれない。「こんだけやってこんなもん?」と思うかもしれません。しかし、それまでの人生の一時を丹念に描いて語ることに思いを込めていることが大事で、登場人物が多いせいで必然的に長いのだと思います。

実はひっかかって今でも「うーん」と思っていることがひとつあります。それは第5章、山崎ハコ氏演じる人形作家と殺人の罪を抱えた忍成修吾氏演じるミツオの接点で、何せ長い映画で二時間慣れしている僕には集中力を持続してるだけで大変で、集中力が切れて読みとれなかったか、または先入観も働いているからかもしれないけど、ちょっと人形作家が彼の下へ行くのには、少しあやふやな感じがしなくもなかった。どうしたって殺人犯ですからね。

なんでかというと、この映画は他に凄い説得力を感じるから。

まあ裏付けと言うか、彼女のカウンセラーとの会話等に思うところはあるけれど。

でもその後、ミツオが人形作家に手で人形芝居をやるシーンは素晴らしい。カイジマが窓の外を見せるシーンとともに屈指の名シーンです。相変わらず細かいことを指摘しますけど、ミツオと人形作家が初めて会うところで、人形作家と弁護士を映す時にガラス越しにぼんやりミツオが映ってるところもいい。

ラストの章「ヘヴンズ ストーリー」も良い。その前「誕生」があったとはいえ何だかここで終わったらどこか虚しさばかりが残るな、と思ったけど、続きがあって驚きました。ハッピーエンドでは無いけれど、どこか胸がすっとする不思議なラストです。

少し不思議な宗教観とでもいうのか、そんなものを感じるんですが、こういうのが好きなんでしょうか。

長い文章になりました。読んでくれた方がいらしたら、ありがとうございます。

最後に。映画は思いついてすぐ脚本書いて撮って公開、そんなことできるわけがないので偶然の一致なのかもしれません。とくにこの映画の場合はだいぶ前から製作しているようですから。

監督自身は、個別のテーマではなくトータルでメッセージを発している、そういったことを語ってて、確かにそう思うけれど、やはり今年の色んな日本映画で語られているテーマが凝縮されていることに、時代を感じました。

「復讐」「暴力」「殺人」「善悪」「いじめ」

アウトレイジ」「ヒーローショー」「告白」「悪人」「カラフル」「十三人の刺客」こういったところです。

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