こんな映画が観たかった!パート2「青いソラ白い雲」

新宿K'sシネマ

点数・・・☆☆☆☆★★(ダンゼン優秀!)

感想は後日。震災・原発事故後に触れていることを全く別にして、少なくとも金子修介監督にちょっとでも思い入れがある人は「絶対に観に行かなければいけない映画」ということは、取り急ぎ書いておきます。

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2012年6月30日追記

オレはキネマ旬報東京友の会の会員です。

今月の会合のテーマが「上半期のこの一本」を1人ずつ挙げるというもので、オレはこの映画について語りました。

以下、そこで語った内容を追記します

金子修介監督作品

主演はこれがデビュー作品となる森星。モデルで、祖母はデザイナーの森英恵。姉はタレントの森泉です。

オレの、現時点でのベストワン作品です。

東京では新宿K'sシネマでのみ上映。2週目以降はモーニングショーのみとなったり、大阪でも小さな劇場で時間限定上映だったりと、公開規模があまりにも小さいため、観ている方が恐らくかなり少ないと思われるため、ネタバレによう注意して話します。

お金持ちのプチセレブの主人公リエは、アメリカ留学が決まる。しかしアメリカに渡った直後に東日本大震災が発生。心配して帰国すると父親は詐欺で逮捕されていて家は差し押さえられ、クレジットカードも使えない。家も親もお金も一気に失ってしまったリエは、挙句に元恋人に被災した犬まで押し付けられ、でっかいガイガーカウンターと犬と共に途方に暮れる。

震災後に思うところあって路上アーティストとなった友人の家に転がり込み、一人で生きるため心機一転を図ろうとするが・・・という震災を通して1人の若者が様々な人間と触れあい成長する姿を描いた、コメディです。

まず良い点その1

主人公のリエがカレーライスさえまともに作れない世間知らずのお嬢様で、こういう設定が効いてコメディになっている。ガイガーカウンター片手に「ここは何ミリシーベルトですか?」なん訊ねてしまったり、マヌケっぷりが可愛く面白い。
不謹慎ギリギリの勝負をしている。

その2

ガイガーカウンター出してみたり、政府と東京電力が遅まきながら炉心溶融を認めたというニュースを挟みそれを伏線としたり、出てくる犬がどこか汚く本当に被災した犬に見えたりするという細かいディテールを評価。ラストはある有名な曲が伏線がきちんと張られた上で登場し、元気が湧いて終わるという巧い流れになっている。金子修介監督ならではの、ファンならすぐわかる、ある「ネタ」も登場。

その3

オレ自身もすっかり忘れていた震災前の予兆、大震災前の余震から物語っている冷静な取材力を評価。
対して同じく震災後を語った話題作「ヒミズ」は、ドイツ文学者の池田香代子先生が「津波で被災した人間が、水のそばで暮すとはとても思えない」と批判していたり、そういった批判にぐうの音も出なそうで、こういった細かい点が非常に甘く、その点「青いソラ白い雲」は上を行っていると評価。

その4

ネタバレにつき伏せますが、物語終盤に起こるある騒動の中で、成長したリエが発する言葉が現在の日本に対する痛烈なメッセージとなっている。どちらかといえば、実際の被災者よりも、被災地外に暮らす我々に向けた映画であると言える。

ちなみに補足ですが監督はかなり苦労したようで「東京電力」等の言葉をセリフから一部自主規制で外さなくてはいけなくなったり、ラジオでも発言が一部カットされたりしてしまったそう。

もうとっくに東京では上映が終わってしまったので、後にソフト化された際には未見の方は是非ご覧ください。

以上。