「中学生円山」(宮藤官九郎監督作品)

ユナイテッドシネマとしまえん

座席位置 前方中央

評点・・・☆☆☆★★★(上出来の部類)

以下、キネマ旬報東京友の会会合の6月のテーマ「まだ間に合う!上半期、この一本は見逃しちゃ損!」のために書いた原稿を転載。

中学生円山

朝ドラ「あまちゃん」が絶好調の宮藤官九郎監督・脚本最新作。

クドカンの映画監督作品を観るのはこれが始めてです。

じぇじぇじぇ!久々に「脳ミソは家に置いてから映画館に来い」みたいな映画でした。

朝の連続テレビ小説も結構トバしてるけど、朝ドラの脚本書いてる人が手掛けた映画とは思えない。超くだらない!つまり超面白い。

江戸川区の団地が舞台。クレジット上はSMAP草なぎ剛氏が主演扱いになってますが、物語上は平岡拓真(ひらおか たくま)氏演じる団地に住む中学生円山克也が主人公と言えます。

あらすじを言うと、円山克也は、自分のペニスを自分自身で舐めることに必死になってる中学生。そのために夜な夜な「自主トレ」に励む毎日。そしてレスリング部の顧問に「おい円山!前屈ばっかりしてんじゃねえよ」と言われつつも、自分のベロが自分のペニスに届くように身体を柔らかくするためにレスリング部の部活に励む。実は終盤の見せ場でこの身体を柔らかくしていたことが活きてくる巧い伏線です。そこに、団地に草なぎ剛氏演じる謎のシングルファーザー下井が引越してきます。彼はたびたび克也に「届いた?」と声をかける。「なぜだ?なぜあの男はオレが自主トレに励んでいることを知っている?」克也の疑心暗鬼と妄想が膨らむが、この下井と交流が深まるにつれ・・・そんな感じです。

円山家家族の描写がユニーク。仲村トオル氏演じる父は5時に帰ってくるサラリーマンで、あまり子供に尊敬されてるとは言い難いが、いい父親像。坂井真紀氏演じる母は韓流ドラマに夢中。しかしある日家電機器の工事に、なぜかヤン・イクチュン演じる憧れの韓流スターが現れて・・・妹は同級生の多感な少女に触発され、何故か同じ団地の徘徊ばかりしてる老人と恋に・・・・

坂井真紀氏演じる母とヤン・イクチュン演じる憧れの韓流スターのやり取りが最高に面白いのだが、特筆したいのは徘徊老人を演じる遠藤賢司さんのキャスティングの妙です。知らないで観たほうが楽しいので書かないが、彼には隠された才能がある。さすがクドカン。バンド「グループ魂」をやってるだけあってわかってます。この遠藤賢司さんの起用法が絶妙。

補足・細かいことだけど、キネ旬のレビューでモルモット吉田氏が触れていたが、深夜の公園で裸踊りをする克也を、間接的ながら草なぎクンが注意するという脚本が通ったのも凄い。草なぎクンと言えばあの事件を起こした人なのに。

まあとにかく、物語の軸となる設定は「自分のペニスを自分自身で舐めることに必死になってる中学生」なので清々しいほどくだらないまま進んでいく物語なのです。

この映画についてあれこれ議論をするのもバカバカしくなるくだらなさ。脳みその形状が変わりかねない。何か「超能力学園Z」を思い出す。観終わった後は脳が空っぽにされたような感じ。

私が中学生の頃と言えば、ポール・ヴァーホーヴェンの「氷の微笑」を観て、コタツの中で生まれて初めてのマスターベーションをしてた頃だ。そんなことを思い出した。じぇじぇ!話がそれた。

この中学生円山克也が、高校生になると「桐島、部活やめるってよ」の映画部に入り、大学生になると「横道世之介」のサンバサークルに入る。そんな流れで誰かに映画評論を書いてほしい。というかこの3作品は並列に語られてしかるべきである。

「ペニスを語るなら中学生だ!」それに気づいたクドカンはエライ。

中学生の頃に一度でも自分のペニスを自分で舐めてみたいと思ったことがある男性、またはお子さんが多感な時期を迎えてる親御さんにおススメ!「桐島」や「横道世之介」に共感した方なら尚更です。

「届いた?」オレのハートには届いた。東京では6/29〜7/12に吉祥寺バウスシアターで上映予定。

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桐島、部活やめるってよ(DVD2枚組)

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