「ぼくたちの家族」(石井裕也監督作品)
座席位置 前方中央
評点・・・☆☆☆★★★ 上出来の部類
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以下、facebookより一部転載。ラストシーンに言及しています。
新宿ピカデリーで石井裕也監督「ぼくたちの家族」観ました。上出来の部類。原作は未読。
石井裕也監督はこの映画を撮影時はまだ20代。キネ旬の特集にも書いてありましたが、20代でこんなに多作な映画監督はなかなかいない。
妻夫木聡氏はかつて、「石井裕也監督や真利子哲也監督と一緒に仕事したい」と公言していました。それが実現したのがこの映画と、石井裕也監督の待機作「バンクーバーの朝日」。
絶賛された前作「舟を編む」を経ての新作。少し前までは「若手個性派の代表格」に見られていたこの監督。今回は脚本兼任なのでどうなってるか楽しみにしていましたが、どうやら「舟を編む」で完全に化けたらしい。物腰の座った落ち着いた作劇。早くも中堅監督の風格さえある。
あらすじは原田美枝子氏演じる母親に訪れた末期の病気。ちなみに母親には病気かもしれないという自覚があります。そのことにより長塚京三氏演じる夫、妻夫木聡氏演じる長男、池松壮亮氏演じる次男が家族と向き合うというもの。
「難病もの」と見せかけた、石井裕也監督の社会派視点が色濃く出ている新作です。「舟を編む」より全面に出ていると言って良いです。
長塚京三氏演じる父は、中小企業の社長で、当初はしっかりした父親に見えるのですが、実際は全然稼ぎは良くなく、肝心な時にはまるで頼りにならない。無駄にジョギングするシーンはそれを強調している。
妻夫木聡氏演じる長男は、妊娠している妻を抱えているサラリーマン。かつて引きこもりだったことが家族への負い目になってますが、頼りにされる長男。
池松壮亮氏演じる次男は、出来の悪い学生。最初は「こいつダメだな」と思って観てましたが、実は大事な時にひたむきに頑張る。市川実日子さんが出てきて「次男が童貞」だと判明するシーンは、全く不要だったと思うけど。
ポイントは、実は母親が消費者金融によって莫大な借金を抱えていた、父親も借金を抱えていた。父親の借金の保証人は、長男である。長男には妻の出産が控えている。この点だと思います。
「この借金問題、どう解答を出すのだろう?」と思って観ていたら、若手を代表するこの監督は、「過去の世代がバブルを経て負ったツケは、これからの世代が必死こいて背負いなさい」というメッセージをわかりやすく出してきました。
ラスト、浮かれてフラダンスする中での長男のショットで終わります。あの時の長男の表情が意味するところは「苦笑」だと思います。
「ひたむきに努力するものが一番輝く」と描いていた前作「舟を編む」とは打って変わって、シニカルな視点が出ている最新作。
借金大国現代日本反映映画。