リダクテッド真実の価値

監督脚本ブライアン・デ・パルマ

今回は少しばかり「レビュー」っぽく書きますが、ここの日記を書いている人間は映画は好きだがアホくらいの認識で、覗かれた方は読んでくださるとよろしい。

少し乱雑な文章になるかもしれませんが、重要な核心に触れないことにだけ気をつけて書きます。わかりづらい文章でしたら、お許しください。

渋谷シアターNにて観賞。僕は背が低いのでこの映画館の場合は前の席に行くことにしています。最前列真ん中の特等席を確保。ていうか、東京ではシアターNでしかやってねえって・・・

この映画は「フェイク・ドキュメンタリー」("ある一部分"を除き。"ある一部分"は、観ると、"その真意"がわかります。)。ただ、わかっていて観ても"ドキュメンタリーじゃないのか?"と錯覚するような作られ方をしています(言葉で具体的に説明するのは難しい)。

ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞」を受賞しながら、米国本国では公開に際して「マスコミの黙殺など」があったそうです(この詳細に関しては、劇場には2種類の広告チラシがあったので、それかパンフレットにて手にとって読んでみてください)。政治的な背景等を想像して観てみると、更に伝わることも多いでしょう。

少し古い例えを出します。前置きしておくと、作風は全く別物です。「反戦映画」として僕はこの映画タイトルをよく出します。

ポール・バーホーベン監督がかつて「スターシップ・トゥルーパーズ」で、思いっきり「軍国主義のような」物語を作り、兵士達が巨大昆虫に無残に殺害されたりする描写はリアルに映像表現しながら、映画自体は徹底して「軍国主義」を徹底的にコケにする皮肉たっぷりに作りました(乱暴なまとめ方ですが、僕はあの映画をそう観ています)。あの殺意満点で虫を踏ん付けている子供と、その後ろで狂ったように笑っている女性とか、マジで怖かった。

対してこの「リダクテッド」は、「インチキ・ドキュメンタリー」でありながら、前述したように錯覚してしまうほど映画全体に「リアル」な表現が覆っていて、直球。それでいて映画の存在自体が、「マスコミ」と「映画・ドラマ」の関係性を思いっきり皮肉っています。これは著名人コメントにも書いてありました。
そしてあらゆるセリフにも「皮肉たっぷりのメッセージ」が込められています。
(例として自分が感じたもの1つのみあげると、「僕のカメラは、嘘をつかない」とか。他たくさんの皮肉メッセージは、実際に観て判断してください。これ以上のがたくさん出てきます。)
例に挙げた上記セリフの場合は「直球」とも取れるのですが、出てくるメッセージが観客にそれぞれ別の判断をさせるような感じになってます。変な言い回しだけど。

観ている間中、真実とは何ぞやみたいな意識がぐるぐる回る。

反戦映画」として最も僕が重要要素としているのが、登場人物の人間描写の深さです(実際当たり前なんですが、これが疎かにされていると感じる凡作駄作も個人的にはあります)。

例えば前述「スターシップ・トゥルーパーズ」も、「ごく普通の若者」(←ここ重要)が、それぞれの経緯で戦争に参加してしまって、相当酷い目に合いながらもその戦場の中での兵士達の変遷をしっかり描いてます。

「リダクテッド」も、序盤は比較的淡々と「ごく普通の若者」の背景を説明し、「ある事件(強姦殺人ではなくまた別の。観て知ってください)」が発生していくあたりから大きく彼らが変化していくことが、一瞬たりとも息つく間も無く描かれていきます。

ここまでにしておきます。最後エンドロールが終わるまで、席は立ちませんでした。結局飲み物一口も飲まなかった。

僕らがこれからもメディアから情報を得ていくことは否定できないです。けれど「何を信じるか」は、本当に意識していなくてはならなくて、ぼんやりしていたら知らず知らずのうちに「盲信」していくんじゃないだろうか。

だから行き着くべき「自分の真実」が人それぞれ別の道であっても、きちんと意識を持っていながら情報をきちんと判断・理解し取捨選択して、「自分の真実」を見つけようとしていなくてはいけないと思う。答えなんて、すぐに出せるわけがないんだから。

これは「メディア」に限ったことじゃない。

きっとブライアン・デ・パルマは、反体制映画を作りながら、強くアメリカと、アメリカ人を愛している。そう思う。

反戦映画」の枠を超えた、ブライアン・デ・パルマの果敢な挑戦にして大傑作。「超」が付くほど「反戦映画」

「目を見開いて、見つめてました。」

まどぎわ通信
映画「リダクテッド 真実の価値」
http://d.hatena.ne.jp/madogiwa2/20081025

ゾンビ、カンフー、ロックンロール
漏れて溢れた作家性「リダクテッド/真実の価値」
http://d.hatena.ne.jp/samurai_kung_fu/20081030

空中キャンプ
[映画]『リダクテッド 真実の価値』を見たゼ!
http://d.hatena.ne.jp/zoot32/20081105#p1

【映画がはねたら、都バスに乗って】
「リダクテッド 真実の価値」:船堀一丁目バス停付近の会話
http://blog.goo.ne.jp/tbinterface/f4aa6d153cebaecb0b5960b45c907916/c2


あと、映画秘宝あたりが好きな方がこの日記を見たら、こういう意味でも観に行くと宜しい。少し財布に余裕持って行くとよろしい。

アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (Bunshun Paperbacks)

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