ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

いまに始まったわけじゃないけど、基本的に日本映画の特にメジャー作品はテレビ番組の映画化が多いことに加えて、漫画や小説の映画化が圧倒的に多い。

そういうわけで、映画化が続いている伊坂幸太郎氏の大ヒット小説の映画化。監督はおなじみ中村義洋監督。

主役はすっかり人気者の堺雅人氏。

ゴールデンスランバー」、この小説の映画化は難しそうな気がしたけれど、これがまたまたなかなか楽しめました。

映画化向きだったのかなと思う一方、監督の味が出てるんだなとも思いました。

何度も言うように、例えどんな小説や漫画であろうが、映画になった時点でその映画を作ってる人間たちにより新しい命が吹きこまれていくもので、

よっぽど無茶苦茶な原作冒涜になってなければ、どう変わろうがそれが良い映画にさえなってれば良しとする考え方です。

なんというか映画版は映画版の個性が欲しいということ。

逆に言えば、映像による忠実な再現の終始という映画にはさほどの興味がないということかも。

この映画を観る前に、ある二つの意見を目にしました。ひとつは小林信彦さんが仰ってた「奇妙な魅力がある」という言葉。

もう一つは、僕が今注目してる脚本家の方が仰ってた「監督の笑顔が見える」という言葉。

双方、なるほどなと思いましたが、僕の観た感覚では後者に近い。

ただ、なんというか自分としては、中村監督が白いタオルひとつを手に、額に流れる汗を拭いながら「ふうー」とでも言いつつ、

いかに楽しませようかと苦心してる図が思い浮かんだ。

どうしても先行して原作を読んでいるために、未読の方々よりは事前の情報量が多いわけなんですが、

明らかに映画版のほうが明るく軽快だと思います。それは監督の演出と堺雅人氏の魅力が大きいんでしょう。

あと、あの香川照之氏が陰に隠れてしまうんじゃないかと思うくらい、明らかに大袈裟になってる永島敏行氏なんかも笑えた。できればもう少し観たかった。

逆に映画版は、文章力で読ませてる感じの原作と比べると、監視されることの恐怖と社会批判精神が薄れている。「フィッシュストーリー」もどこか毒のない映画でしたから。

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くわえて特にキルオなんだけど、主人公以外の登場人物たちと主人公が接触する際の説得力が弱いので、多分未読の方はひっかかる人もいるだろうなとも思いつつ、

僕としては、映画版は映画版でなかなか個性と明るさ・楽しさが出てて楽しめたので「よくできました」。

中村義洋監督と堺雅人氏に今後も期待。特に堺雅人氏は森田芳光監督の新作が控えてるのでいまから楽しみ。

あと竹内結子氏がショートカットにして若いメイクすると、どこか山崎真実氏っぽくなることが分かりました。

点数=☆☆☆★

T-JOY 大泉

原題:ゴールデンスランバー  日本映画

監督:中村義洋

脚本:林民夫 鈴木謙一 中村義洋

撮影:小松高志

音楽:斎藤和義

出演:堺雅人 竹内結子 吉岡秀隆

製作総指揮:原田知明 市川南

原作:伊坂幸太郎

公式サイト:http://www.golden-slumber.jp/

配給:東宝