パレード

映画誌を読んだ限り、今年はどうやら２作品公開する監督が多いようですナ。

その中の一人が「今度は愛妻家」「パレード」の行定勲監督。

「今度は愛妻家」の感想の際も書いたと思いますが、僕にとって行定勲監督は「世界の中心で、愛をさけぶ」でも「今度は愛妻家」でもなく、「GO」の監督です。

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大袈裟ではなく、たとえ一瞬でも「この人は天才か！？」と思わせた数少ない日本映画の監督の一人。

日本映画には、ウェルメイドな映画、ハートウォームな映画、芸術的な映画などなど、確かに良いのはたくさんあります。

ただどこか心の中で、ああいうちょっと刺激的な青春映画が観たいと、自分は常に思っているんだと。

それだけで比較するのもなんだけど、同じようなテーマを捉えた井筒和幸監督「パッチギ！」が後に現れたけれど、僕は「GO」のほうが優れていると思ってます。

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その後はこれといってピンとこない映画、またはダメな映画とかが続いたけれど、勝手にも律義にお付き合いし続けてきました。

「クローズド・ノート」も可もなく不可もなくの不入り作品になって、思い出がわりにパンフレットまで購入。

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どうやら評判が良さそうな「今度は愛妻家」も、前半のみ魅了されたけど僕には今一つな映画です。「クローズド・ノート」を観ている人なら理由がわかるんじゃないかなあ。

そして新作「パレード」。

メインキャラクターとなるのは、藤原竜也、香里奈、貫地谷しほり、林遣都、小出恵介の諸氏。

林遣都氏と小出恵介氏は、新人の大森寿美男監督、演出補中西健二氏のスポ根映画の佳作「風が強く吹いている」の組み合わせ。

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チャットみたいな、上辺の善意で連なる若者たちの話。

この若者たち、それぞれが少し距離を置こうとして無関心さがみえても、どこかで誰かを求めているのが見える。

始まってから一気に緊張感に引き込まれた。隠し味的な演出となにかを匂わせるようなセリフを塗しているのが効いているとでも言えばいいのか。

限られたシチュエーションで展開していくのに、グイグイ呑まれていく。

何気ない歩きながらの会話のシーンだけでも見せられる。どこか「GO」の窪塚洋介氏と柴咲コウ氏のデートシーンを思い出すような感覚。

少しずつ小出しにするように登場人物を見せていき、どこかみんなに共感してしまうように思わされる。

加えて林遣都氏の、まさかの危険な香りをさせる名演技（というか彼のファンならスクリーンで必見のシーンあり！）。

「コレはキタ！」と思いました！ついに「GO」の行定勲監督が傑作を産む！

・・・惜しかった。あともう少しで大傑作だったろう。

まずちょっと終盤のあの出来事が唐突に思えたけど、振り返ってしばらく考えると、ちょっとした章立て構成を絡みあわせるような全体像になってる映画だと考えれば、「ひとつの章を締める１エピソード」として考えると、そこまで不自然でも無いような気もする。

つまり最終盤こそ、真のラストシーンと考えるワケ。

ピーター・ジャクソン監督の新作「ラブリーボーン」のほうが遥かに唐突ですネ。

ただそれよりも、敢えて描かないで匂わせたと思えばそうなんですが、どこか歯の奥になにか詰まったままの感じが残った気もしました。

個々人の、特に藤原竜也氏と林遣都氏演じる二人の人物がたどる関係性がどこか皮肉めいていて秀逸だけに、この二人がもう少し高い説得力で深く抉られれば、と。

この映画は調べたら118分。「今度は愛妻家」は長過ぎると書きましたけど、こっちは短かすぎたのかもしれません。

けれどこの映画、それを補って余りあるような緊張感と人間へのどこか共感を持たせるような点がかなり秀逸で、見ごたえあると思います。

これはそれぞれが距離感を尊重するがゆえに何も手に入らないでいる若者を描いた映画なんじゃないかな。

ちなみに原作は未読です。

採点=☆☆☆★★

でもこの作品を観て、改めて思いました。

行定勲監督はやはり傑出した才能を持ってると。大袈裟ではなく、僕の思った通りだった。

エンドロールが出て始めて本人による脚本だと知りました。

本人が脚本の完成度を上げるか、かつてのクドカン氏のような良い脚本家と組めば、きっとまた大傑作が産めるんじゃないか。

どこか確信めいたものを感じました。僕はこれからも行定勲監督を追うでしょう。

大仰な言い方かもしれないけれど、一目ぼれした人を追うような映画の楽しみ方は良い。

新宿バルト９

原題：パレード　 日本映画

監督：行定勲

脚本：行定勲

撮影：福本淳

音楽：朝本浩文

出演：藤原竜也　香里奈　貫地谷しほり　林遣都　小出恵介他

原作：吉田修一

製作：WOWOW　ショウゲート　キングレコード　ハピネット　

公式サイト：http://www.parade-movie.com/

配給：ショウゲート