渇き

近年も「シークレット・サンシャイン」「チェイサー」そして「母なる証明」など、次から次へと見ごたえある映画が登場する韓国。

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そんな韓国映画から、パク・チャヌク監督の新作。主演は名優ソン・ガンホ氏。もとは「コウモリ」ってタイトルらしい。

ソン・ガンホ氏演じる神父が、ワクチン実験をきっかけにヴァンパイアになってしまうというところから始まる映画。

ヴァンパイアになった後も、よく知ってるヴァンパイアとまるで違う行動をとり続けるのでどこか滑稽で可笑しい。
しかも演じているのがあのソン・ガンホ氏だ。なんだけど、さすが名優だけあって「グッド・バッド・ウィアード」と同じような可笑しさは出さない。

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というか、ちょっと前のポン・ジュノ監督作品に出演してた頃とはまるで別人のように痩せてシャープな顔立ちで、声質までいつもと違う印象すらする。

パク・チャヌク監督は、例えば韓国、そして無理やりソン・ガンホ氏つながりでポン・ジュノ監督と比較すると、「殺人の追憶」の頃からほとんどスキを探すのが
大変なくらい天才ぶり丸出しで突っ走ってる感じがするポン・ジュノ監督よりは、どこか色々いじくりつつというか何かを試しながら映画を作ってる感がします。

かといって、実験的なだけでつまらないと言っているわけではないです。

シークレット・サンシャイン」にしろ「母なる証明」にしろ、韓国映画の傑作にはどこか哲学めいたものがあって、
しかもそれが難しくて頭の中を疑問だらけにされただけで終わらないところにその個性があると思っているのですが、
「渇き」も同様で、愛・性・官能・信仰・背徳などなど複雑なのですが映画自体は鮮やかなまま展開して終えていくので観賞後感が心地いい。

そしてなによりこの映画が表現している、どこか柔らかな官能さにすごい魅力を感じた。

キスシーンやセックスシーンなどが、音や映像、演技も含めてどこか柔らかい感触。

というか、自分はてっきり彼女がああなったところで神父にとって背徳が極限に達したから、てっきりこの映画はそこで終わりかと思ったので、
その後がまだあったので本当に驚いた。

そんなところで終わらせないのが、いまの韓国映画の真骨頂なんだろう。とにかく登場人物をとことんまで追い詰める。

少しでも罪深き者に対しては容赦しないのだから凄い。映画にみられるそのストイックさはなんなんだろうか。

新宿武蔵野館

原題:THIRST  韓国映画

監督:パク・チャヌク

脚本:パク・チャヌク チョン・ソギョン

撮影:チョン・ジョンフン

音楽:チョ・ヨンウク

出演:ソン・ガンホ キム・オクビン

プロデューサー:パク・チャヌク アン・スヒョン

公式サイト:http://kawaki-movie.com/

配給:ファントム・フィルム

点数=☆☆☆★★