川の底からこんにちは(石井裕也)

渋谷ユーロスペース

川の底からこんにちは 日本映画

監督・脚本:石井裕也

主演:満島ひかり

撮影:沖村志宏

音楽:今村左悶 野村知秋

プロデューサー:天野真弓

http://kawasoko.com/

配給:ユーロスペース ぴあ

☆☆★★★(水準以下だが多少の興味あり)

PFFスカラシップ作品である。監督は、これまで長編映画をいくつか作って発表していたらしい石井裕也監督。映画芸術誌でコラムを書いている人だね。いやあ「カケラ」の安藤モモ子監督でも書いたけど、僕より年下の映画監督っすよ。横浜聡子監督が同い年で驚いていたと思ったら。

「東京で五年、五つめの仕事、五人目の彼氏。冴えない”中の下”のOLが、実家のしじみ工場に戻って・・・」というコメディなんだけど・・・

いやあ、映画に馴染むまでに苦労するシロモノだった。初日に観たけど二時間前にチケット買ったのに番号は既に110番台、サービスデーとはいえ立ち見客がワンサカ出るほどの盛況ぶり。どうやら事前から注目を集めていたようだ。でもたびたび場内は沸いていたけど僕はダメだった。

序盤から、言い方は悪いかもしれないけどショートコントっぽい単発的な笑いの取り方なのだ。特に給湯室のシーンが本当にコントっぽい。

コメディとして、ひとつのシーンが醸し出す哀愁だとか、想像力をかきたててくれるような要素が本当に無い。次から次へとショートコントっぽいやりとりの繋ぎの応酬なのだ。

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思うに、ひとつの喜劇作品の中で伝えようとしていることが多すぎるんじゃないだろうか。

こうなってくると色々なことが引っかかり始める。

例えばヒロイン佐和子が上京することになったきっかけとか、そういった謎も意外とあっさり明らかにして引張らねえんだなあ、とか、会話していると急にイライラして揉めたりすんだなあ、一番口数の少ない子供の言動が納得いくなあ、とか、などなど。

まあそうやって疑わしく観ていると・・・

以下は映画の後半部の詳細に触れます。ここから褒めます。

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ヒロインを演じる満島ひかりさんに、満島ひかりさんならではとも言える”点火”が起き、みんなで妙な社歌を歌い始めると急に映画が盛り上がり始める。

イカだとか、腸内洗浄から始まり肥料やウンコだとかいった問いかけも、再度整理し始める。

満島ひかりさんが最後に相手の男に対して、本当は寂しかったんだ、そこが悔しいというような告白もするが、そう思わせてくれるシーンなんてあったっけ?とは思ったけど。

やはり伝えようとしてるメッセージが多すぎるんではないか。ちゃんと悲喜劇ならではの哀愁や想像力を掻き立ててくれるようなシーンを作って映画を組み立ててほしかった気がする。