武士道シックスティーン(古厩智之)

武士道シックスティーン  日本映画

テアトル新宿

監督・脚本:古厩智之

脚本:大野敏哉

主演:成海璃子 北乃きい

撮影:清久素延

原作:誉田哲也

主題歌:MiChi

プロデューサー:井上衛 樋口慎祐

http://bushido16-movie.com/

配給:ゴーシネマ

☆☆☆★★

読売新聞に週に一回世代を問わず注目の人を二面に渡って紹介するコーナーがあって、少し前に北乃きいちゃんが登場していた。そこで北乃きいちゃんが「わたしはバブルを知らない世代だけど」云々なる発言をしていた。ああ、まあそうなるか。僕も世代としてそこまでバブルを強く実感した気はしないけど。

その数日後の週刊文春で、「本音を申せば」を連載している小林信彦さん(1932年生まれ)と品田雄吉さん(1930年生まれ)のお二人が、北乃きいちゃん(1991年生まれ)を含むその前後の世代の若手女優を4ページにも渡って語りつくしていた。

実際当たり前の話なんだけど「うわー!日本って僕が思ってる以上に広いわー!いろんな歴史をしょった世代が混じり合ってるよなー!」とか改めて思った。いや僕もその一人なんだがね。ちなみに小林信彦さんは北乃きいちゃんに関してはノーチェックだったようで、「覚えておこう」と仰っていた。

って前置き長くなったけど、映画の感想と全く関係ありません。

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そんな北乃きいちゃん(1991年生まれ)と成海璃子ちゃん(1992年生まれ)のW主演で贈る、剣道を題材に対極的な2人の16歳の女の子を描く青春映画の佳作。古厩智之監督作品。

簡単に背景を説明すると、成海璃子ちゃん演じる女の子は父(小木茂光氏)の影響でストイックに剣道に打ち込んでおり、北乃きいちゃん演じる女の子は勝敗よりも続けることを目標としてる女の子であり、こちらにも父(板尾創路氏)の人柄が影響している。

交差する父娘それぞれが異なった価値観を持ってるわけだが、どの価値観を選択しても必ず犠牲が生まれるのである。失うものもあるのだ。だからそれぞれ痛みも持っていて、その痛みも描いている青春映画なのである。2人のヒロインと同世代はもとより、それ以上の世代にも思うところがある映画だと思う。2人の父親の存在が効いている。

堀部圭亮氏演じる顧問が折れる心に言及する。劇中で「心」という漢字をキャメラが映しだしたとき、「ああ、心って文字は改めて見ると折れてるようにも見えるなあ」なんて思った。

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惜しいのは教室の風景や食卓のシーンになると、どこか映画的味わいを失いNHK教育テレビのドラマにでも出てきそうなシーンに見えてしまうところかな。加えて大森寿美男監督「風が強く吹いている」みたいな青春映画ならではの豪快な撮影を挟んでみてもよかった。

けれど街の中にある何気ない草木の風景が映画に情感を与えている。今はどこにでもあるようなショッピングモールの中を2人が裸足になって歩くシーンも素晴らしい。

近場のシネコンに観客を取られてしまっているのか、映画館は観客はそれなりに入っていたもののヒロイン達と同世代の人たちはあまり見られなかった。

というよりこの映画で改めて、やはり今の上映形態はどこか変だぞと思うところがあったけれど、その話はまた今度。

良い映画でした。

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武士道シックスティーン (文春文庫)

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