彼とわたしの漂流日記(イ・ヘジュン)
シネマート六本木
CASTAWAY ON THE MOON 韓国映画
監督・脚本:イ・ヘジュン
出演:チョン・ジェヨン チョン・リョウォン他
撮影:キム・ビョンソ
音楽:キム・ホンジプ
製作総指揮:カン・ウソク
配給:CJエンタテインメント・ジャパン
好感度点数=☆☆☆☆
僕もそう思ってしまいそうになるが、韓国映画というと定番ラブストーリーか、はたまたハードでストイックな映画か、といったら、そんなわけがないと思う。日本映画にも色んな映画があるように、韓国映画にだって色んな映画があるはずだ。
「自殺に失敗したことがきっかけで都会の孤島に漂流してしまったサラリーマンと、ひきこもりの女性の2人が織りなすストーリー」こう書くと「何それ?」と思うかもしれません。僕も思った。だから、観に行った。しかし有り得ないようで、そして繋がらないような2人の物語が、観てるうちに度々場内爆笑、そして感動的で涙腺緩まされ、さらには皮肉めいたメッセージまで織り交ぜる、素敵なファンタジック・コメディ。
まあ、漢江が流れる孤島で主人公の男性の名前がキムだから、「グエムル 漢江の怪物」ならぬ「キム 漢江の難民」でありましょうか、いやいや、怪物は出ません。
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まあ前もって言っておくと、奇想天外な物語と思った上で観てみたほうがいいかもしれない。言い方は悪いけど、頭が固いヒトには向かない映画かもしれない。「アラ探し」しようとすれば結構出てくるかもしれない。実際僕も、鳥のフンのくだりは「本当かよ」と思った。
ただ上記したように、ただのアイディア勝負のラブ・コメディではない。かなり皮肉めいた普遍的なメッセージがふんだんに盛り込まれていて驚く。
まず、都会の孤島というのは言うまでもなく、現代の人間関係の希薄さだ。
そして孤島となれば、財布の中身などクズ同然である。だけど彼の場合、「孤島でサバイバル」を試みることにする「動機」があれば、さらには「目標」も生まれる。これにはハッとさせられた。
彼がシャンプーで髪を洗うところは痛快な皮肉だ。その後の魚と鳥に、うわわ僕らって怖いことしてるよね、と。
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かたや彼を見つめるひきこもりの彼女も、タイトルに「彼とわたしの」ってついてるけど、彼女もひきこもりながら、「漂流」してるんです。行き場を求めて迷ってるって言えば良いかな。
ちなみにインターネットに対する厳しい指摘と、女性の変身願望の強さっていうのは韓国ならではなのかな。ちょっとそのへんは良くわかりません。
でも決して説教クサイ映画ではありません。例えば、ヘルメット被ったヒロインが警備員の背後を走り去るシーンとか、なんかカワイイ。基本的にはホンワカしているコメディ。
あと終盤のあるシーンの、走りっぷりも良い。スリリングな追っかけっこ「チェイサー」母が踊り走る「母なる証明」家族のために必死に走り脱北を試みる「クロッシング」などなど、韓国映画で走ってるのは良いですネ。どれも全く違うタイプの映画ですけど。
あと、「文通」ってのが最高。
あまり事細かに書かないほうが良いかな。知らないことが多い方が楽しめる映画でしょう。
観た後”あるもの”が強烈に食べたくなります。あ、「E.T.」のオマージュっぽいところもありました。違うかな?
クソ暑くってイライラしてる方、そんなとき、ちょっとEの観たなあ、って気持ちになるかも。身体は暑いのイヤだけど、心は暖かくなるのはOKみたいな方どうぞ。なーんてね。
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