「フィギュアなあなた」(石井隆監督作品)

池袋シネマ・ロサ

座席位置 最前列中央

評点・・・☆☆☆☆ ダンゼン優秀!

以下 Facebookより転載


池袋シネマ・ロサにて「ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う」以来の石井隆監督の新作「フィギュアなあなた」を観ました。素晴らしかったです!R18指定だろうが、オススメしたいです!

あらすじは、パワハラ気味の上司から理不尽なリストラにあった青年が、ヤケ気味に酔っ払いケンカをした相手に追われた先の廃墟ビルの中で、無数のマネキンの山の中に、まるで生きている人間かのような美少女フィギュアを見つけ・・・というもの。

自分は観る前に『石井隆流の「空気人形」(是枝裕和監督作品)みたいになってるのかな』と予想してましたが、あんなぺ・ドゥナ無駄脱ぎの凡作とはまるで違う、想像を超える傑作でした。曖昧な表現なんで最近使うの止めようかなと思っていた「映画的」という言葉を使いたくなる映画は、まさにこういうものだとさえ思う、石井隆流のミラクルファンタジーワールドを思う存分堪能しました。

現実なのか夢なのか、そしてそれは悪夢なのか幸福な夢なのか、はたまた淫らな夢なのか、目まぐるしく交錯する物語に釘付け。観終わった帰り道も興奮は収まらない。

なんでもキネマ旬報の巻頭特集でのインタビューによると、女優のヘアヌードありきという企画がまずあって、そこに今回”美少女フィギュア・ココネ”を演じるヒロイン佐々木心音氏から「女優になりたい」という話が来て、彼女で映画を撮るならどうすべきか考えた末、そこから20年前の石井隆監督自身による原作を引っ張ってきて映画にしたらしい。それを現代の映画にしてみせる石井隆監督の作り手としての辣腕ぶりには驚くしかない。

佐々木心音氏の見事なアイドル映画とも観て取れる。「スワン・ココネ」が宙を舞うシーンでは、あまりの美しさに思わず涙腺が緩んだ。同世代を演じる柄本佑くんにもマジ共感。

ところで気になるのは撮影手法。前作「ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う」ではデジタルでの撮影で、いくつか観づらいシーンがありました。今回もどうやらデジタルらしいんですが、夜や廃墟ビル内など暗いシーンも多いんですが、全く観づらいシーンが無かった。何が前作と変わったんだろう。

世代も映画監督デビューも違うけれど、黒沢清監督が10年以上の時を経て再び「リアル 完全なる首長竜の日」というメジャーでの大作を撮った。石井隆監督にも再び豪華な映画を撮ってくれる日が来ないだろうか。