「ラブ&ピース」(園子温監督)

出演 長谷川博己麻生久美子、渋川清彦、西田敏行

TOHOシネマズ新宿

座席位置 前方左寄り

評点・・・☆☆☆☆ ダンゼン優秀!

以下、facebookより転載


寝ながら便意をもよおして、5時に目が覚めてしまいました。私、お腹弱い子なんです。だから映画の感想でも書くので、通勤・通学途中に流し読みしていただければ幸いです。

こないだ、園子温監督「ラブ&ピース」観ました。現時点で、今年観た日本映画で最も素晴らしい映画です。

園子温ってどんな人?」という人もいるのでざっくり説明します。

意外と映画監督としてのキャリアは長い。地味にミニシアターで公開する映画で何とも個性的な映画を作り続けていて「知る人ぞ知る」みたいな映画監督でした。

満島ひかり安藤サクラ両氏を一躍ブレイクさせた4時間にも及ぶ「愛のむきだし」という映画で、多くの映画ファンを熱狂させ一躍注目される存在になった。

実は「愛のむきだし」の前に「紀子の食卓」という映画があって、これがたしか吉高由里子氏のデビュー作だったと思うので、役者を発見する力に長けているのかもしれない。

その後も、「冷たい熱帯魚」のような過激な作品や、被災地で撮影した「ヒミズ」、原発事故をテーマにした「希望の国」などで、知名度をどんどん上げていった。

こんなところでしょうか。

最近の園子温監督は「地獄でなぜ悪い」「TOKYO TRIBE」と、ストーリーテリング、テーマ性よりも「ビジュアリスト」(見た目で勝負)の作風が続いていた。

そして、少し前に公開された「新宿スワン」は、監督としての個性は薄れ、いかにも「頼まれたから作りました」的な、そこそこおもしろいけど全く個性的ではない映画だった。

今年の園子温監督は映画量産体制で、正直「また園子温作品か」と思いながら観ました。

ここまで書いておきながらこんなこと言うのもおかしいですが、別に私は園子温監督の熱烈ファンじゃない。ただ、何か妙に気になるので観てきた、ただそれだけ。

説明してたら前置きが長くなってしまった・・・

「ラブ&ピース」なんてタイトルが付いているので、「何かクセエ映画撮ったのかなあ」と思ってた。

しかし、決してそんなことは無い。おそらく園子温監督が始めて撮った、世代・性別を超えて親しまれるタイプの立派な娯楽映画でした。

冒頭、田原総一朗氏や宮台真司氏などが出てくるシーンがあって、ここが社会風刺の伏線となっている(いきなり始まるのでびっくりしたけど。まだ劇場CMが続いてるのかと思った)。

そして長谷川博己氏演じる冴えないサラリーマンが痛い視線と環境に耐えているシーンに移る。ここの描写が少しエグく描かれている。

これまでの園子温監督の個性が発揮されているのは、おそらくここまでだ。ここからは、これまで観せたことがない新しい園子温ワールドが展開されていく。

ここからは、本編をぜひ観てほしいから書かない。代表作の「愛のむきだし」「ヒミズ」以来と言える直球の愛の映画は、これまでとは全く違う形で描かれていく。

「伝えられない愛」、「見守る愛」、そして西田敏行氏が出てくるシーンでは、まさかの園子温監督で「トイ・ストーリー」風な愛情表現もあり、様々な愛を絡めて物語は綴られていく。

登場人物全てを肯定的に包むこの愛の讃歌は、映画をそんなには観ない方々にも愛される「大衆に愛される映画監督園子温誕生」の、きっかけになるかもしれない。

ここ最近の彼の作品では間違いなくベストワークと断言したいので、「園子温苦手」「園子温飽きた」「園子温よく知らない」、そんな人たちにもぜひ観て欲しい。