おとうと

大御所山田洋次監督の新作。主演は傑作「母べえ」に続いて吉永小百合さんと、同じく出演していた笑福亭鶴瓶さん。

母べえ 通常版 [DVD]

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ちなみに監督は先日のベルリン国際映画祭で特別功労賞だかを受賞したそう。

市川崑監督の「おとうと」へのオマージュが込められているわけです。

吉永小百合主演」ってことで観客の年齢層は高いかと思ったんですが、以外にも自分が観に行った時は若い人が結構いました。蒼井優タンと加瀬亮氏効果だろうか。

優タンはかなり重要な役どころだし。花嫁衣装可愛過ぎ。

まず、詳細に触れるので後半で書こうと思うんですが、僕自身は市川崑監督の「おとうと」を観たことがあるのですが、やっぱり前持って観ていたほうがいいのかな?

リメイクではないんですが、観てないほうが逆に新鮮に感じるということもあるのかもしれませんね。そこは人それぞれですな。

おとうと [DVD]

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吉永小百合氏は、「母べえ」では「何せ実年齢知ってるから、どうしても年齢的に無理があるなあ」と思ってたわけですが、今回はぴったり。

ただこういうこと書くと彼女のファンから怒られそうですが、前半とか、なんかいくつか変な気がしました。なんか所々台詞の言い方が固いというか、妙に不自然さを感じてしまう部分がいくつかあったのです。

なんというか「はっきりしゃべり過ぎ」な気がしたのです。まあそういう女性の役といえば役なんですけど。むしろ「母べえ」のほうが自然だったかなあ。

だけど、不思議と後半になると感じなくなったのですけど。これがもともと彼女が持ってる存在感たるものだろうか。

あ、「まぼろしの邪馬台国」はそもそも映画が珍品で一刻も早く記憶から抹消したいので、ここでは割愛。

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そして!何と言っても素晴らしかったのは鶴瓶師匠!見事!まさに彼に泣き笑い。まさか彼を「本当に名優なのかもしれん」と思う日がこようとは!

具体的には後半で書きますけど、「ディア・ドクター」で映画初主演で謎めいた男を演じて映画賞とか取ってましたけど、もしかしたら本業俳優ではないのに二年連続でいろんな賞を取るなんてことがあるやもしれない。正直多くの俳優より出演作品に恵まれているし、むしろ重宝されてもなんもおかしくなくなってると思います。

それで感想なんですけど

これは市川崑監督の「おとうと」へのオマージュでもあり、まあなんというか現代版「男はつらいよ」みたいな感じなんだろうかと思いました。

男はつらいよ」に詳しくないけど。

ただこれは感動作というか、どことなく厭世的と言うと大げさかもしれませんけど、何だか「山田洋次の溜息」でも聞こえてきそうな話、と僕は思いました。後半に書きますけど。

それと、関係ないけどなぜか「おとうと特製スイートポテト」が売っててつい買ったのですが、これがなかなかどうして美味でした。不思議なことに製造元は「十勝甘納豆」なんですけどね。

あ、通りすがりの人でびっくり大物が登場してました!

ここからは詳細に触れるので、点数の後はこれから観る人は読まないでください。

なかなか良い映画でした。ただ前作「母べえ」が、当時を体験している我が親でも唸ってしまうような見事な映画だったため、期待が高かったので・・・・

点数=☆☆☆★★

お楽しみはココからだ〜 映画をもっと楽しむ方法
「おとうと」
http://otanocinema.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/2009-2ea7.html

さーべる倶楽部
「寅さんのダークサイド」
http://sabreclub.exblog.jp/9137789/

僕はそもそも「男はつらいよ」をそんなに観たことがない。そしてリアルタイムで観ていた人とも違うわけですけど。だからそこらへんはよく書けないのだが。

前に山田洋次監督が結構昔書いた本を読んだことがあって、その中で当時「寅さんは、何を言っても許される何かがある」云々みたいなことを書いてた記憶があります。

もちろん名優が演じて出した魅力もあるんでしょうが、それは公開されていた当時の御時世に絡めての発言なんです。

それとは逆に「おとうと」は、後半に確かにホスピスで姉たちに囲まれて人生の幕を閉じるわけですが、何せ結局家を再び訪れることはなかったわけです。

何より、ややボケ気味っぽいお婆さんが最後に言って終わるラストを入れたのは皮肉の意味を感じた。あの時優タンと小百合タンには、溜息的なものを見た気がしました。

「弟は亡くなって、私たちは気付いたが、結局は弟のような人間(つまり寅さん的人間)の通用しなくなった日常に戻る」みたいなね。

つまり、今のご時世は(まあ鶴瓶版と寅さんは違うとは理解したうえで)「寅さん的人間」が生きるには厳しいものになって、そういう社会が続いていくみたいな話なんではないでしょうかね?ホームレスを見て「ワイより良い生活している」みたいなことを言ってたわけで。

鶴瓶版のほうがダメ人間なんだけど、とにかくこういう生き方をしている人間には生きづらい世の中だ、ということなんじゃないかなあ。

母べえ」もある意味現代の話なわけですが、あの映画も最後には小百合タンが悲痛の無念さを言って終わったわけです。山田洋次監督作品はこういった映画が続いたと思いました。

もう一回書いておくと、「男はつらいよ」をそんなに観たことがない。そしてリアルタイムで観ていた人たちとも違うわけですから、ほとんど憶測ですがね。

市川崑監督「おとうと」を観たことのあるものとしては、まさしく再現!ただ正直鍋焼きうどんは、市川崑監督のほうが「うまい」と思いました。

あと、僕の好きな「癒し系の時の小日向文世氏」が語る例の制度の話は知らなかったので勉強になりました。

それにしても鶴瓶師匠は素晴らしかった。前半はまさに師匠だからこそ出せるような味があったし、後半病に伏してるところも、病気の役なのに元気そうなまま出てくるのが多い日本映画だから、役者たちに見てほしい。大げさにやらないところも良い。

残された女性たちには、おとうとがいなくなったあとも日常があるんだぜ。

とすると、「母べえ」も含めて、ある種の女性賛歌ってことか?

つーか、蒼井優ちゃんが舌を出すのがイチイチ可愛くて、「剱岳 点の記」であおいちゃんが切手をなめるところが妙に気になったを含め僕はどこに注目してるんだと思いました。


新宿ピカデリー

原題:おとうと 日本

監督:山田洋次

脚本:山田洋次 平松恵美子

撮影:近森眞史

音楽:冨田勲

出演:吉永小百合 笑福亭鶴瓶 蒼井優 加瀬亮

プロデューサー:深澤宏 山本一郎 田村健一

配給:松竹