抱擁のかけら

ペドロ・アルモドバル監督&ぺネロぺ・クルス氏の組み合わせの新作。

どういう物語なのか知らずに観賞。

久しぶりに、自分の心の中のどこかをくすぐられているような、そんな感覚になりながらうまいこと最後まで構成に翻弄されながら観てしまったという感じでした。

実は最初のほう、あまり入り込めないというか、何となくぼんやりと観ていました。

それが、はっきりと、「はっ」とさせられたのは、ちょうどぺネロぺ・クルス氏演じる女性とパトロンとの場面で、トイレで吐くあのあたりから。

実にエグいシーンだと思う。

僕が見る限りこの映画は、「作品」の主役がレナで、実際物語の主役はマテオだろうと思います。ただこれは僕が男性だからかもしれませんけど。

ただこの映画はどこか静かな罠に満ちているというか、ストーリーの展開が、こういうテーマに見せかけて実はこういうテーマ・・・という複雑に絡み合って進んでいたという感じで、最終的には映画というものへの愛をこめたような幕を閉じたように思えました。

例の鮮やかな色彩感覚(注1)も良い。

予告から知っていた、ぺネロぺ・クルス氏がマリリン・モンローオードリー・ヘップバーンを思わせるようにふるまう場面などがあるからというわけでなく、それほど映画に詳しいわけでもない自分が観ていても、こんな感じをいつかどこかで観たようなと思わせてくれるようなショットがたびたび現れるのも楽しい。

観ている間はまんまと構成に翻弄されてしまったクチなので、どちらかと言うと観終わった後しばらくしてから味が出てきた映画。

ちなみに映画中映画は、ペドロ・アルモドバル監督の初期代表作がモデルらしいんですが、僕はそれは未見。

ちなみにいくら美しかろうが、僕はレナのような女性は好かない。

点数=☆☆☆★★★

(注1)特別感想は書いてない映画なんですが、「食堂かたつむり」の監督はもしかしてペドロ・アルモドバル監督のファンなんじゃないか?と思いました。

新宿ピカデリー

原題:LOS ABRAZOS ROTOS スペイン映画

監督:ペドロ・アルモドバル

脚本:ペドロ・アルモドバル

撮影監督:ロドリコ・プリエト

音楽:アルベルト・イグレシアス

出演:ぺネロぺ・クルス他

製作総指揮:アグスティン・アルモドバル

公式サイト:http://www.houyou-movie.com/

配給:松竹