さらに「イエローキッド」に関して

イエローキッド」感想はこちら
http://d.hatena.ne.jp/tanipro/20100302/p2

日本映画の歴史に燦然と刻まれるであろう、ふたつの青春映画の大傑作「青春の殺人者」と「太陽を盗んだ男」(注1)を生み出した
天才長谷川和彦監督は、自分が目指し続けている映画のテーマに”毒×痛快(一回だけ涙)”があると言っていました。

毒×痛快は観れば表現されているとおわかりいただけるであろうことですが、一回だけ涙というのは、「青春の殺人者」の水谷豊氏と「太陽を盗んだ男」の沢田研二氏が、物語の中で印象的な涙をこぼすシーンがあるということです。

もちろん、長谷川和彦監督の二大傑作と真利子哲也監督の劇場長編デビュー作「イエローキッド」は何もかもが違う。

けれど僕が「イエローキッド」を観た時、長谷川和彦監督の「太陽を盗んだ男」を観たときに感じたものと似た何かを感じとったという点は
以前書いたけど僕なりに間違いないことだ。

今の日本映画ではなかなかお目にかかれなくなってしまった、「毒×痛快」が効いているのも確か。

長谷川和彦監督は、いまの日本映画に観られなくなった何かを持っていたし、真利子哲也監督も、いまの日本映画に観られなくなった何かを持っている予感がする。

2人は全く違うけど、同時に何か同じ期待を感じさせた。

人は映画を好きなように観て語るし、自分なりのアンテナを用いて、自分が自分で観たいと思った映画を観る。

自分なりに映画をきちんと見つけるアンテナは、映画を観てじっくり味わうのと同様、大事です。

僕は、長谷川和彦監督を待ち続けるのと同様に、この真利子哲也監督の今後がひたすら楽しみになった。

この文章を読んだ方、ぜひ「真利子哲也」という名前をアンテナに加えてみてはいかがかと。

まだ劇場長編デビューしたばかりで言い方が大袈裟すぎる気がしますけど、覚えていておいて損は無いと思う。

なにか凄いことしそうな才能の片鱗を、スクリーンで目撃した!その興奮がまだある。

(注1)「青春の殺人者」はデビューでいきなり、当時のキネマ旬報第一位。

太陽を盗んだ男」は、去年出されたキネマ旬報「オールタイム・ベスト映画遺産200 日本映画篇」で堂々7位。

オールタイム・ベスト 映画遺産200 日本映画篇 (キネ旬ムック)

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