海炭市叙景(熊切和嘉)
渋谷ユーロスペース
海炭市叙景 日本映画
座席位置:最前列中央
監督:熊切和嘉
脚本:宇治田隆史
撮影:近藤龍人
美術:山本直輝
音楽:ジム・オルーク
原作:佐藤泰志
公式サイト:http://www.kaitanshi.com/
配給:スローラーナー
好感度点数=☆☆☆★★★
〜映画はその時代を映す〜
日本映画に関して今年一年、映画が登場する奇妙な巡り合わせのようなもの強く感じることが多かったなあ、と個人的に思います。足しげく劇場に通って本当に良かったと、この映画を観て改めて思いました。それだけ社会性だとかメッセージの強さが前に出た映画が多かったってことなんでしょうか。
どういうことか。
「告白」「悪人」「十三人の刺客」「ヘヴンズ ストーリー」と、「復讐」や「善悪」を問う映画がありました。
「アウトレイジ」「ヒーローショー」と、「暴力」を描いた映画がありました。
「おとうと」「カラフル」「オカンの嫁入り」「武士の家計簿」「春との旅」あたりは、「家族のありかた」かな。
あとタイトル並べて挙げるとネタバレになりかねないので避けるけど、「愛する人への記憶」なんてのもあったなあ。
他にもあるけど長くなるのでこの辺にしておくと、福岡出身の平山秀幸監督が福岡の炭鉱町の盛衰を描いた「信さん 炭坑町のセレナーデ」が全国公開された直後に登場したこの映画は、函館の市民の手によって企画され、函館で撮影されたんだとか(チラシより)。監督は北海道出身の熊切和嘉監督。
原作は「村上春樹らと並び評されながら、90年に自らの命を絶った不遇の小説家・佐藤泰志」(チラシ)の小説らしいのですが、その頃まだチビッコでしたので、全く存じませんでした。
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序盤、竹原ピストル氏演じる男性の笑顔に心を掴まれた。その後彼が激昂するシーンもあり、彼の表情に緊張感と親近感を感じました。
その後登場する、まだ未熟な面を感じさせる二代目社長加瀬亮氏やプラネタリウムで働く小林薫氏、彼ら「やや旬を過ぎた男性たち」(と、僕はみた)が出す魅力が際立っている。しかもそれぞれ世代が違う。加瀬亮氏は同世代なので身につまされる。
映画全体、観ていてどこか、悪い意味ではなく居心地の悪さのようなものを覚え、特に表情などにピリピリとした緊張感を感じました。
逆を言えば、現実を映し出すための風景や、人物の微妙な動作等をじっくりと観せたいという意図を強く感じはしながらも、そのため”間”の多い映画になってるので若干長尺過ぎる点が気にはなるけれど。
季節が映画のシビアな面を一層引き立てていた。相変わらず、「ウルトラミラクルラブストーリー」「パーマネント野ばら」などの近藤龍人氏の撮影が冴えている。この季節に観るにふさわしい映画であるかも。
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原作に関することは、以下で川本三郎氏が細かく書いていたので気になる方はどぞ。
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