「さよなら渓谷」(大森立嗣監督作品)

新宿武蔵野館

座席位置 最前列中央

評点・・・☆☆☆★★★ 上出来の部類

以下、Facebookより転載


過日、新宿武蔵野館で、秋葉原事件をモチーフにした「ぼっちゃん」に続く大森立嗣監督の今年2作目「さよなら渓谷」を観ました。「パレード」「悪人」「横道世之介」と映画化が続く吉田修一氏原作で、主演は真木よう子さん、相手役に大西信満さん、他に監督の実の兄弟大森南朋さんなどが出演。ヒットしているようで劇場は混雑してました。

公式サイトやチラシ等にも書いてあるように、「ごく普通の夫婦、だがふたりは残酷な事件の被害者と加害者だった」と言うとおりで、真木よう子=「被害者」、大西信満=「加害者」の構図で、これに加えて映画のテーマに「体育会系」が背後にあって、大西信満とそれを追う大森南朋の2人=「体育会系崩れ」が軸に加わります。ちょっと偏見が入ってるかもしれないけど、その「事件」というのもいかにも「体育会系」にありそうな事件です。

真木よう子さんを中心に、この主要な3人の軸が導かれあったり、離れたりする作品です。吉田修一題材としては「悪人」系統でしょう。

良い作品です。完全に大人向け。真木よう子さんありきです。今年主演女優賞とか取ったりするんじゃないでしょうか。特に後半からは傷を背負った真木よう子さんの微妙な心理の変化に魅せられます。

けど、同時に惜しい作品だなあ、とも思いました。

もっと予算があるメジャーの映画なら「悪人」みたいな「これだ!」という大きな見せ場もできたかも。でもこれは仕方なくて、この規模の映画としての作りを役者と原風景できちんと真っ当し作ってるんですが、もう少し欲を言えば、シナリオにもっと厚みがあれば、あの西川美和監督の名作「ゆれる」を超える大傑作ができたかもしれない。

実はオレだけじゃないと思うんですが、「これ、『ゆれる』意識してないか?」ってところがあるんです。

まあ、色々注文を付けましたが、それだけ良い作品でこの監督には期待できると思った次第です。上出来の部類です。おすすめです。

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